デザイン作業で必須となる「仕上がりサイズ」と「編集サイズ」について

印刷物のデザインを制作していると、印刷会社から「仕上がりサイズと編集サイズを守ってデータを作成してください」と案内されるケースがよくあります。しかし、日頃デザインに馴染みのない方からは、「サイズはひとつあれば十分なのでは?」という質問も少なくありません。
実は、印刷物は大量の紙を面付けしてまとめて裁断する工程があり、その際にどうしても数ミリ程度の“裁ちズレ”が発生します。このズレを考慮せずにデータを作成してしまうと、文字が切れたり白いフチが出たりと、仕上がりに大きな問題が生じてしまいます。
そこで重要になるのが 仕上がりサイズ と 編集サイズ の考え方です。本記事では、この二つの違いと、編集サイズに含まれる「塗り足し(背景領域)」および「安全領域」について、初めての方でも分かりやすいように解説いたします。
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1. 仕上がりサイズとは
仕上がりサイズ とは、印刷物が裁断され、実際に完成した状態の最終的な寸法を指します。
名刺であれば「91×55mm」、チラシであれば「A4 210×297mm」など、手元に届く完成品そのもののサイズです。
仕上がりサイズはあくまで“完成形の寸法”であるため、このサイズのままデータを作成すると、裁断時の誤差を吸収できません。その平衡を取るために必要なのが編集サイズです。
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2. 編集サイズとは
編集サイズには次の二つの領域が含まれています。
* 塗り足し(背景領域)

* 安全領域

これらは、裁断時の誤差によるトラブルを防ぎ、安定した品質で印刷物を仕上げるために欠かせない設定です。それぞれの役割を詳しく説明します。
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3. 塗り足し(背景領域)とは
塗り足しは、裁断ズレによって紙の白いフチが見えてしまうのを防ぐために、仕上がりサイズより外側まで背景を広げておく領域のことです。
例えば、仕上がりがA4サイズ(210×297mm)の場合、一般的には上下左右に3mmずつ塗り足しを付け、編集サイズは 216×303mm になります。
塗り足しが必要な理由
* 裁断機の構造上、1〜2mmの誤差が必ず発生する

* 背景が仕上がり線ギリギリで終わっていると白フチが露出する

* 写真、模様、全面カラー背景では特に重要

塗り足しを設定していないと、印刷会社から再入稿の連絡が来たり、白フチが出るなど品質に明らかな問題が生じることがあります。
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4. 安全領域とは
安全領域とは、文字やロゴ、細い線などの重要要素を配置してはいけないエリア のことです。
仕上がり線付近に重要な要素を置くと、裁断ズレにより文字の一部が欠けたり、読みづらくなるリスクがあります。
一般的には、仕上がり線から内側に3〜5mmほど余白を確保し、その内側に重要要素を収めるのが基本です。
安全領域の役割
* 裁断ズレによる文字欠けを防ぐ

* デザインのバランス・視認性を向上

* 名刺・リーフレットなど情報量が多い印刷物には特に重要

安全領域を理解して配置することで、見た目の安定感と読みやすさを高いレベルで確保できます。
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5. 仕上がりサイズと編集サイズの比較
項目
仕上がりサイズ
編集サイズ
定義
完成品の最終寸法
裁断誤差を考慮した作業用サイズ
含まれる領域
なし(実寸のみ)
塗り足し、安全領域
主な目的
完成サイズの基準
裁断ズレを吸収し品質を安定
A4の例
210×297mm
216×303mm
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6. 実務で多いトラブル例
現場では、次のようなデータ不備が頻繁に起こります。
* 塗り足しがなく、白いフチが出てしまった

* 文字が端に寄りすぎて、一部が切れてしまった

* ロゴが仕上がり線に近すぎてバランスが悪い

* 印刷会社から再入稿依頼が来て納期が遅れた

これらはすべて、編集サイズを正しく設定していれば防げる問題です。
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7. まとめ:編集サイズの理解が品質を決める
仕上がりサイズと編集サイズの違いは、印刷デザインにおいて最も基本となる要素です。一見すると複雑に感じるかもしれませんが、これらを理解して設定するだけで、印刷物の品質は飛躍的に安定します。
ポイントの再確認
* 仕上がりサイズは完成した印刷物の寸法

* 編集サイズは裁断ズレを見越した作業領域

* 塗り足しは白フチ防止に必須

* 安全領域は文字・ロゴの欠け防止

* 正しい設定が品質とレイアウトを左右する

印刷は“データの精度が仕上がりを決める”と言っても過言ではありません。
基本を押さえてデータを作成すれば、印刷会社とのやり取りもスムーズになり、安定したクオリティの印刷物を制作できます。
ぜひ、今後のデザイン制作にお役立てください。

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