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印刷会社から「ロゴのAIファイルを送ってください」と言われたものの、手元にはJPGやPNGなどの画像データしかなくて困った経験はありませんか。そこで、画像をIllustratorに読み込んでAI形式で保存し、そのまま送ってしまうケースがよくあります。
しかし、この方法は印刷品質に問題が生じるため、印刷会社としては避けたい受け取り方です。
では、なぜAI形式で保存しただけではダメなのでしょうか。今回はその理由を分かりやすく解説します。
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1. 印刷会社がAIファイルを求める本当の理由
印刷会社がAIファイルを求める最大の理由は、ベクターデータで印刷作業を行うためです。
ベクターデータは線や図形、曲線などを数値情報で構成しているため、どれだけ拡大しても画質が劣化しません。名刺・看板・パッケージのように使用サイズが変わるロゴには、ベクター形式が必須と言えます。
一方、JPGやPNGといったビットマップ形式の画像はピクセルで構成されているため、拡大するとギザギザしたり、輪郭がぼやけたりします。特にロゴのように鮮明さが求められるデータには適していません。
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2. Illustratorに画像を入れてAIで保存してもベクターにはならない理由
多くの方が誤解しやすいポイントがこちらです。
「Illustratorに画像を配置してAI形式で保存すれば、ベクターになるのでは?」
実際には、AI形式で保存しても中身はビットマップのままです。
例えるなら、紙の書類をスキャンしてPDF保存しても、内容が編集可能なテキストになるわけではないのと同じです。
以下は、ベクターとビットマップの違いをまとめた表です。
| 区分 | 構成 | 拡大時の品質 | 主な形式 | ロゴとの相性 | 編集のしやすさ |
| ベクター(Vector) | 数値・座標情報 | 劣化なし | AI、EPS、SVG | 非常に良い | 線や形、色まで編集可能 |
| ビットマップ(Bitmap) | ピクセル | 劣化あり | JPG、PNG、GIF | 不向き | 編集が非常に限定的 |
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3. Image Traceで変換はできるが…限界が多い
Illustratorには**Image Trace(画像トレース)**という、ビットマップ画像をベクター化する機能があります。
しかし、以下のような限界があります。
画像トレースの主な制限
* 複雑なロゴには不向き
細かい模様や陰影、複雑なグラデーションは正確に再現できません。
* 色の多いロゴの変換は困難
特にグラデーションロゴはほぼ別物になります。
* 変換後の手作業修正が必要
印刷に耐えるレベルにするには、専門的な修正が欠かせません。
* 元のロゴを100%再現することは不可能
したがって、シンプルなアイコンや単色ロゴであればある程度対応可能ですが、企業ロゴのように複雑なデザインの場合、実務では推奨されません。
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4. 一番確実な方法は「元のベクターロゴを入手すること」
印刷トラブルを避けるために最も有効なのは、ロゴのベクター形式(AI/EPS/SVG)の元データを確保することです。
ロゴ管理のチェックポイント
1. ロゴ制作時のデザイナーに元データを依頼する
ほとんどの場合、デザイナーがAI/EPSデータを保管しています。
2. ファイル名にバージョンや色モードを記載
例:company_logo_main_CMYK.ai
3. クラウドや社内共有ストレージで管理
何度も印刷会社に再提出する手間がなくなります。
4. 印刷用とWeb用を分けて保存
PNG・JPG(Web)とAI(印刷)を混同しないためにも重要です。
ロゴは企業の重要なブランド資産です。
最初からベクターデータを確保しておくことで、名刺・パンフレット・看板・広告バナーなど、あらゆる制作物で品質を安定させられます。
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5. まとめ:AI形式で保存しただけではベクターにはならない
最後にポイントを整理します。
* 印刷会社がAIデータを求めるのはベクター品質で印刷するため
* JPG・PNGをAIで保存しても、内容はビットマップのまま
* Image Traceは補助的な機能であり、完璧な変換は不可能
* 最も確実なのは、ロゴのベクター元データを準備して管理すること